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[クラシック・ニュース 2016/3/22〜 2016/3/28]
2016年3月25日(金)
東京音楽通信〔193〕 2016年3月 海外情報(その1)ドイツ
ようこそ、ベルリンへ

私たちの中心へようこそ 難民とその支援者のための特別コンサート ―― 前回、バレンボイム&ベルリン・シュターツカペレの模様をお伝えしました。5月にはベルリン・フィルがベートーヴェン・ツィクルスを東京で敢行します。今年の東京はベルリン・イヤー。

そんな最中、ベルリンにやってきました。最初に聴いたのは日本から帰還したばかりのシュターツカペレのほか、コンツェルトハウス管、ベルリン・フィルといったこの町を代表するオーケストラが集まり、難民とその支援者を招待するコンサートです(3月1日、フィルハーモニー)。

まずはバレンボイム&シュターツカペレのモーツァルト「ピアノ協奏曲第20番」。両者の東京での同曲の上演を本欄先月号でお伝えしたばかりだったこともあって、今回は特にフィルハーモニーのアコースティックの素晴らしさを痛感させられました。ピアノの音が立ち、オケとの対話がヴィヴィットに伝わってくる。

バレンボイムは、専業ピアニストにくらべるとざっくばらんなところもあるけれど、オケとの協奏の中で、どの声部がどの程度聞こえなければならないかは、実によく把握している。それがフィルハーモニーのようなホールだと、分かるように伝わってくる。サントリーホールといえども、ここまでヴィヴィットに伝わってくる席はごく一部なんじゃないか。

続いてコンツェルトハウス管によるプロコフィエフ「古典交響曲」。指揮のイヴァン・フィッシャーは今度ウィーン国立歌劇場と共に来日するアダム・フィッシャーの弟。ともに経験値十分なうえに、じわじわと人気もつけています。「古典交響曲」は大胆にテンポをいじって面白く聴かせる。ウィットにとんだドライヴが、観客を魅了していました。気負ったところもなく、楽章ごとに拍手に応えてお辞儀をする姿も好ましい。場がもりあがるキャラクターです。

真打ちラトル&ベルリン・フィルは、ベートーヴェン「交響曲第七番」より第二・四楽章。第二楽章は、静かな主題提示に始まり、漸増しながら大きな波を描いたのはさすが。おそらく普段はそんなにクラシック音楽を聴く習慣のない人々も、しんと聴きいっていました。室内楽的に引っ張っていきながら、コーダに強烈なストレッタをかけて導いた大きなクライマックスは、まさに神業。

ところで、難民受け入れの理想は各家族それぞれが自分の住宅を持ち、社会に溶け込んでもらうことなのですが、現在のところは施設暮らしを余儀なくされている方が大半です。この日の会場は難民の方よりも、ヴォランティア団体や教会などで活動しているドイツ人のほうが多いかなという印象でした。少し話を聞きましたが、やっぱり受け入れで一番大変なのは言葉だそうで、スポーツとならんで音楽鑑賞は言葉のいらないよいリクリエーションだとおっしゃっていました。コンサートの反応ですが、スタンディングオベーションに加え口笛がすごかった。抑圧しているものが解放されるというのか。

難民問題は受け入れ側の物理的な負担も少なくなく、このところの選挙結果にみられるようにドイツ人だって本音はいろいろでしょうが、やってきた人々も心細い想いをしているはず。ベルリンのトップオケが集まって開くこの催しには、単なる鑑賞にとどまらない、祖国を追われた人々、様々な意見に揺れるドイツ社会、ひいてはヨーロッパ社会や世界に対するメッセージが込められているのでしょう。



白鳥のように優雅に

ベルリン州立バレエ アダム「ジセル」 ―― ウンター・デン・リンデンの州立オペラは目下改装工事中なので、公演はベルリン・ドイツ・オペラの目と鼻の先にあるシラー劇場で行われています。ここではメイン・ホールのほかに工房と呼ばれる小さい会場があって、こちらで実験的なものや創作ものを取り上げています。この日(3月3日)は工房の公演に行くつもりだったのが、突然中止になったので、代わりにメイン・ホールでのバレエ「ジゼル」を鑑賞しました。

私に舞踊を云々する能力はないので素人の感想ですが、バレエってとにかく奥ゆかしいんですよ。「ジゼル」第一幕は主人公の発狂死という衝撃的な結末を迎えます。発狂というとオペラでは「ランメルモールのルチア」なんかが思い浮かびますが、あそこでは主人公がコロラトゥーラでこれでもかと絶叫し、と思えば突然小鳥のようにさえずったりして、見る側も「なんかやばいな」という気分になる。でも、「ジゼル」ではバレリーナがひたすらもの悲しい表情を浮かべ、ばったり倒れるだけ。聞こえてくるはずの叫びが聞こえてこない。ここが切ない。

第二幕は死んだ主人公が、同じく恨みを抱えてこの世を去った女の霊たちの集団に入ります。幕間から会場に焦げ臭いにおいがただよい、火事じゃないかと心配になりましたが、幕が開くと、もやの中から鬱蒼とした森の情景が現われる。

その彼方に、左から右へ、右から左へ、と高速で移動する物体あり。目を凝らすとそれは女霊の総元締めミルタ役のバレリーナ。上体を固定したままつま先だけを動かして、重力のくびきからとき放たれているかのように軽々と、高速で移動する。もう不自然なまでに敏捷な動きで、思わず未確認飛行物体投稿映像なんかを思い浮かべましたが、こちらはフェイクではなく生身の人間。遠目では氷の上を滑走しているみたいで、なんだかすごい、けれど不審。

第二幕の群舞も見ごたえあり。すらっとしたおねえさまたちが一糸乱れず、すすすすっと滑る。たっぷりと恰幅のよいおばちゃんが十代の小娘をやるなんてこともオペラでは珍しくないわけで、そういうのを見慣れている人間としては、もうこれだけで絵的に感動します。

カーテンコールでバレリーナが両腕を広げお辞儀をする姿も、白鳥が翼を広げるように優雅。シラー劇場はキャパシティが小さいので、舞台と客席に一体感があるのもよかったです。

ベルリン州立バレエ アダム「ジセル」
ベルリン州立バレエ アダム「ジセル」 ベルリン州立バレエ アダム「ジセル」
Yan Revazov  


巨匠化するヤンソンス

マリス・ヤンソンス指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 ―― 今回の滞在で当たったベルリン・フィル定期では、指揮台にヤンソンスが登場しました(3月4日、フィルハーモニー)。

一曲目、ベルリオーズ「ローマの謝肉祭」。中低音域に力があり、躍動感が違います。主題がヴァイオリンからヴィオラに移ると、バトンを渡された走者が他をごぼう抜きするように音がぐーんと延び、朗々とした歌が聴こえてくる。まさにハイパワー・エンジン搭載のスーパーカー。すさまじい加速力です。

ディティーユ「遙かなる遠い国」。チェロ協奏曲で、トゥルルス・モルクのソロで。この人は音がよく立っていて、正確無比。ダブルストップもピッツィカートもカンカンとよく響く。精密さではベルリン・フィルも負けていません。

ショスタコーヴィチ「交響曲第10番」。ショスタコーヴィチの交響曲はモダンな作曲家にしては音が少ないというか、音楽を垂直に切ったときの密度がすかすかなんですが、時間をかけてねっとりと迫ってくる底力があって、そこをどう聴かせるかがいい演奏かどうかの分かれ道。第一楽章とか第三楽章とかがそうですね。

ヤンソンスのリードは意外にあっさりしていて聴きやすかった。今よりもずっと脂ぎっていた壮年期であれば、もっとせり上げるような音楽づくりをしたんじゃないか。これも一種の風格なのかもしれませんが、ちょっと物足りなさも感じます。スケルツォやフィナーレは対照的に金管や打楽器がどっかんどっかん鳴り、顔面が焼けるような鮮烈な爆発力に目の前が真っ白になりました。


江藤光紀 (音楽評論)

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2016年3月23(水)
METライブビューイング2015-16 第7作 プッチーニ《マノン・レスコー》まもなく!

METライブビューイング2015-16の第7作は新演出の「プッチーニ《マノン・レスコー》、4月2日から東劇ほか全国で上映される。

このところのMETライブビューイングの面白さを大きく感じる。プッチーニの出世作を柔軟に対応のMET首席指揮者F・ルイージの指揮がだんだん乗ってきているだけに期待が持てそうだ。海外ニュースでもこの「マノン・レスコー」の成功ぶりを取り上げている。

◆上映情報

METライブビューイング2015-16 第7作 プッチーニ《マノン・レスコー》
上映期間:2016年4月2日(土)〜4月8日(金)東劇ほか全国で上映!

指揮:ファビオ・ルイージ 
演出:リチャード・エア

出演:
クリスティーヌ・オポライス(マノン・レスコー)
ロベルト・アラーニャ(デ・グリュー)
マッシモ・カヴァレッティ(レスコー)
ブリンドリー・シェラット(ジェロント)

MET上演日 2016年3月5日 上映時間(予定):3時間25分(休憩2回)
言語:イタリア語

YouTube映像

写真(C)Ken Howard/Metropolitan Opera

METライブビューイング: http://www.shochiku.co.jp/met/program/1516/

METライブビューイング2015-16 第7作 プッチーニ《マノン・レスコー》 METライブビューイング2015-16 第7作 プッチーニ《マノン・レスコー》

METライブビューイング2015-16 第7作 プッチーニ《マノン・レスコー》
左上:Kristian Schuller_Metropolitan Opera 右上・下段:(C)Ken Howard/Metropolitan Opera


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2016年3月23(水)
新譜CD情報: 《空飛ぶ笛III  江崎浩司(リコーダー)》
《空飛ぶ笛III 江崎浩司(リコーダー)》

《空飛ぶ笛III  江崎浩司(リコーダー)》

(1) B.パウエル:カイ・デントロ(サンバに夢中)
(2) E.サティ:ジュ・トゥ・ヴ
D.ミヨー: スカラムーシュ Op.165c
(3) 第1楽章 ヴィフ Vif
(4) 第2楽章 モデレ Modere
(5) 第3楽章 ブラジルの女 Brazileira
(6) J.シュトラウス2世:観光列車 Op.281
(7) R.ロジャース:私のお気に入り
(8) E.エルガー:愛の挨拶 Op.12
(9) B.ブリテン:バッカス(オウィディウスによる6つの変容 Op.49より)
(10)H.マンシーニ:ピンクパンサーのテーマ
(11)N.アダレイ:ワークソング
(12)A.ドヴォルジャーク/F.クライスラー編:ユーモレスク Op.101 No.7
(13)A.ドヴォルジャーク:アレグレット・グラツィオ―ゾ
                (交響曲第8番 ト長調 Op.88 第3楽章)
(14)W.A.モーツァルト:アンダンテ K.315
(15)J-Ph.ラモー:未開人
(16)J.C.ペープシュ:アレグロ(作品1より第3番 第4楽章)
(17)L.アンダーソン:トランペット吹きの休日

江崎浩司/リコーダー[1-17]・編曲[1-8, 10-17] 
伊藤一人/チェンバロ[1-8, 10-17] 
永谷陽子/ファゴット[6-7]・リコーダー[17] 
横田朱乎/リコーダー[17]

録音:神奈川県立相模湖交流センター 2015年6月3〜5日
番号:ALCD-3108 
税抜価格:2,800円 2016/03/07発売
会社:コジマ録音

リコーダー奏者:江崎浩司の「空飛ぶ笛 シリーズV」がリリースされた。彼の見事なエンターテイナーぶりはリコーダー奏者の域から大きくはみだすくらいだ。彼の手にかかると、ジャズであっても、バロックでもポップスでも独特の世界に引きずり込んでしまう。

 チェンバロやファゴットとのアンサンブルを入れながら、リコーダーをさらに加えたL.アンダーソンの「トランペット吹きの休日」などもなかなかのものだ。

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2016年3月23(水)
ヴァイオリン:アリーナ・イブラギモヴァの日本ツアー! 逸材のソロとピアノの盟友セドリック・ティベルギアン(ピアノ)とのモーツアルトのソナタ全曲の魅力!
ヴァイオリン:アリーナ・イブラギモヴァ
ヴァイオリン
アリーナ・イブラギモヴァ
(C)SussieAhlburg2012
セドリック・ティベルギアン
ピアノ
セドリック・ティベルギアン

アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)の日本ツアーはベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを演奏して多くの話題を呼んだ盟友:セドリック・ティベルギアン(ピアノ)とのコンビで、昨年10月に引き続きモーツアルトのヴァイオリン・ソナタ全曲(全5回)のVol.4 & Vol.5に取り組む。

 イブラギモヴァはめったに出ない逸材で、そのフレキシブルで変化自在の音楽を向こうに回して、完璧な対応のティベルギアンの妙技に惹かれる。

 このデュオのほか彼女のソロリサイタルも完璧な実力に加え、古楽奏法も取り入れた演奏で聴衆を惹きつける。


コンサート情報
《アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)&セドリック・ティベルギアン(ピアノ)モーツァルト・ヴィオリン・ソナタ全曲演奏会(全5回)Vol.4 》

《アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)&セドリック・ティベルギアン(ピアノ)モーツァルト・ヴィオリン・ソナタ全曲演奏会(全5回)Vol.4 》
●2016年3月24日(木)19時 銀座・王子ホール

モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ

  • ソナタ ヘ長調K.377
  • ソナタ 変ロ長調K.8
  • 「ああ、私は恋人を失った」の主題による6つの変奏曲 ト短調K.360
  • ソナタ ハ長調K.303
  • ソナタ ハ長調K.403
  • ソナタ ヘ長調K.13
  • ソナタ ハ長調K.28
  • ソナタ 変ホ長調K.26
  • ソナタ 変ロ長調K.378


《アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)&セドリック・ティベルギアン(ピアノ)モーツァルト・ヴィオリン・ソナタ全曲演奏会(全5回)Vol.5 》
●2016年3月25日(金)19時 銀座・王子ホール

モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ

  • ソナタ 変ホ長調K.380
  • ソナタ イ長調 KV.12
  • ソナタ ト長調K.11
  • ソナタ 変ロ長調K.570 (ヴァイオリン追加バージョン)
  • ソナタ 変ホ長調K.302
  • 「羊飼セリメーヌ」の主題による12の変奏曲 ト長調 K.359
  • ソナタ イ長調K.526

各公演 全席指定6,000円 2公演セット券11,000円 *セット券は王子ホールチケットセンターのみ取り扱い
予約・お問合せ
王子ホールチケットセンター 03-3567-9990
プレイガイド
CNプレイガイド 0570-08-9990
ローソンチケット 0570-000-407

公演詳細:王子ホール
http://www.ojihall.jp/concert/lineup/2015/20160324-25.html
チラシ(PDF/2.28MB)
※こちらのPDFを印刷し、チラシとしてご利用いただけます。

《無伴奏コンサート アリーナ・イブラギモヴァ》
アリーナ・イブラギモ ヴァヴァイオリン・ソロ

  • ビーバー:「ロザリオのソナタ」よりパッサカリア ト短調
  • J.S.バッハ:無伴奏パルティータ第2番 二短調 BWV1004
  • イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番 二短調 「バラード」
  • バルトーク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ
アリーナ・イブラギモ ヴァヴァイオリン・ソロ

●2016年3月27日(日)15時 パルテノン多摩 小ホール
一般 5,000円  お問合せ チケットパルテノン:042-376-8181
http://www.parthenon.or.jp/music/2365.html


アリーナ・イブラギモ ヴァヴァイオリン・ソロ

●2016年3月30日(水)14時 所沢ミューズ マーキーホール
全席指定:2,800円 お問合せ ミューズチケットカウンター:04-2998-7777
http://www.muse-tokorozawa.or.jp/event/detail/20160330/     
チラシ(PDF/1.51MB)
※こちらのPDFを印刷し、チラシとしてご利用いただけます。   

アリーナ・イブラギモ ヴァヴァイオリン・ソロ●2016年4月3日(日)14時 名古屋・電気文化会館 ザ・コンサートホール
全席指定:5,000円 学生3,000円 *学生券は電気文化会館チケットセンター  
お問合せ:052-204-1133
http://www.chudenfudosan.co.jp/bunka/denbun/topics/detail/20691


試聴:ナクソス・ミュージック・ライブラリー(NML)

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2016年3月23(水)
【CD紹介】《変奏曲の世界》イゴール・レヴィット(P)
《変奏曲の世界》イゴール・レヴィット(P)

【CD紹介】《変奏曲の世界》イゴール・レヴィット(P)

曲目 

  1. バッハ:ゴルトベルク変奏曲BWV988
  2. ベートーヴェン:ディアベリの主題による33の変奏曲ハ長調Op.120
  3. ジェフスキ:「不屈の民」による36の変奏曲   

演奏:イゴール・レヴィット(P)

録音:ベルリン、ナレーパ通り放送会館 2015年8月6〜9日(1)、2015年1月29日〜2月1日(2)、2015年3月1〜4日(3)
会社:SONY
番号:SICC30245〜7
定価:4000円

バロック、古典・ロマン派、現代と音楽史を通じて各時代から選ばれた3曲の変奏曲がまとめられているのがユニークだが、2015年ハイデルベルク春の音楽祭でレヴィットは過酷とも思われるこのプログラムによる演奏会で成功を収めている。変奏の数は三曲を合計すると何と99を数える。 そのロシアに生まれ主にドイツで活躍しているレヴィットは、まだ29歳という大変若いピアニストである。

バッハの『ゴルトベルク変奏曲』はチェンバロではなくモダン・ピアノで弾いているわけだが、ここにはあえて古楽器を意識させる中途半端な演奏ではなく、ピアノらしいソノリティを生かした爽やかさが好ましい。変奏はもちろんだが、冒頭と最後のアリアも実に丁寧に弾かれていてニュアンスがいっぱいに漂っているのも見事である。

 ベートーヴェンの『ディアベリ変奏曲』も徒に曲の巨大さを意図するのではなく、ここでも一つ一つの音を大切に扱いながら生き生きと変奏の持つ意味を的確に描き分けている。速めのテンポで始まる主題にはどこか諧謔的な味もあるが、その柔軟さこそレヴィットの演奏の本領だろう。

 ジェフスキの『不屈の民変奏曲』はバッハやベートーヴェンとはまったく異なってチリの革命歌を主題にした曲であるが、ここにはその政治的なメッセージから離れても、純粋な音楽として存立しうることを示している。それだけに口笛や叫び声などを含むいかにも現代音楽的な特殊奏法もごく自然にカヴァーされていて少しの嫌味もない。

野崎正俊(音楽評論家)

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